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【6】負け組も満たされた“長居劇場” ワールドカップを楽しむ

 W杯も決勝トーナメントに入れば、どんな組み合わせになるのかが直前までわからない。予選グループで何位通過になるのか、また、どこが勝ち上がってくるのかは、今回のW杯では特に想像もできなかった。
 私たち神戸ウイングスタジアムのボランティアたちは、H組を2位通過の日本が、C組を当然1位で上がってくるブラジルと戦うことを期待していた。しかし、ブラジルは来たが、日本は来なかった。良くて2位通過どころか、3戦無敗での1位通過を成し遂げたからだ。
 大分にフランスが来ることを予想した人はいても、セネガルの名前を挙げた人はほとんどいなかっただろうし、準決勝でドイツと韓国が当たるなんて夢のようである。実際、韓国の快進撃にはアジア人として、夢を見させてもらった。
 22日の土曜日、大阪・長居に準々決勝を見に行った。セネガル対トルコ、日本が来るはずだった試合だ。
 メーンスタンドに座った私の前にはアルゼンチンと中国のサポーター。ジャパンブルーを着た私を含めて、そこは、長居に来るはずだった負け組サポーターのたまり場。しかし、その夜の試合は、そんな残念組の心も充分満たしてくれた。セネガルの個人技、トルコの強さ。延長戦までもつれた試合は本当に楽しかった。
 あの感覚は何だろう。初めは日本の仇を取ってくれと、セネガルを応援していた。しかし、ゲームが進むうちにそんな屈折した考えは消えていった。試合にのめり込んで、拍手をし、声を上げ、立ち上がるようになっていた。そして、つまらない反則やミスから点が入らないよう祈った。
 自分たちのサッカーをしてほしい。そして心に残るゴールが見たい。トルコの美しいゴールで劇的に幕が下りた長居では、両チームが場内を回り、いつまでも拍手と声援に包まれていた。
 私以外にも思った人がいるはずだ。「このまま日本と韓国でw杯がずっと続けばいいのに」という無茶な願いを。ボランティアをやり、試合を観戦し、コラムまで書かしてもらった私は今、7月に来てほしくない。

産経新聞夕刊2002年6月27日より


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