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【1】緊張と解放の戦い 目の前で ワールドカップを楽しむ

 日本代表の真剣勝負を見たのは初めてだった。1993年4月、結局はドーハで歴史的悲劇を味わうアメリカW杯の一次予選で、日本はタイを迎えて神戸で戦っていた。
 雨のユニバ競技場。盛り上がるJリーグとは違う雰囲気を、人気選手見たさに集まっていた観客は少しずつ感じていた。私もそんな一人だったが、「こんなところで負けられない」と選手たちの背負っているものの大きさに気づき始め、やがて「一緒に戦ってやる」とスタジアムは一つになっていった。
 途中、ウェーブが起こった。消えることなく何周も何周も、選手たちの想いを受けとめ、それに応えるように波は回り続ける。決勝ゴールは・・・カズが決めた。日本をワールドカップに連れて行くとブラジルから帰って来た男がゴールに突きさした。 
 その後の記憶が私にはしばらく無い。何かを叫んでいたらしいが、カズダンスを見たのは夜のニュースだった。
あんな気持ちになったのは生まれて以来無かった。「これがワールドカップなんや」と、その魅力の何分の一にも満たない予選でも、世界大会の凄さを感じることが出来た。それ以来、サッカーを見ている。
 ここまで書いていると『秋田、中山代表入り』というニュース!そうや、あの重たさを知っている男たちが代表に欲しかったんや。涙が出たやないか。泣かせやがってトルシエの演出好きめ。
 カズが私に教えてくれたワールドカップが始まる。空港で合宿地でニコニコと花束を受け取っていた男たちは、あと1週間で顔付きを変える。張りつめた緊張とゴールの開放、その戦いが目の前で見られるのだ。愉しめるなーこの1カ月。
 私はあの神戸でボランティアをする。9年前の山の手ではなく海辺に出来た真新しいウイングスタジアム。研修会で向かう度、その美しさに酔うのだが、あそこに満員のお客様が来るのかと思うと眠れない。開幕まであと少し!

産経新聞夕刊2002年5月23日より


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